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お心当たりのある方はお気軽にご相談ください。
出血の原因が何なのか、今後どう対処(検査・治療)
すべきか、明確に指導いたします。

日常診療において、「下血」を訴えて受診される患者様が少なくありません。

「便を見たら血が付着していた」「おしりを拭いたらティッシュに血が付いた」「お腹が痛くて下痢したら苺ジャムの様だった」「鮮血がポタポタ出た」「便がイカ墨(コールタール)の様だった」など訴えは様々です。

1. 血便とは

まず、肛門から血液成分が排出される状態を「下血」といいます。

そのうち、鮮血(真っ赤な血)が混じった便を「血便」、黒い血が混じった便を「黒色便(タール便)」といいます。目に見えない微量の血液が便に混じっている状態が「便潜血」です。

◆黒色便(タール便):食道~小腸

◆褐色の便:下部小腸~右半結腸

◆鮮やかな血便:左半結腸~肛門

2. 血便の見分け方

腹痛、発熱、吐き気、肛門痛などを伴う場合と、血便だけ(伴わない)のこともあります。

まず問診で、血便の色(赤さの程度)、性状(血だけ、粘液が混じるなど)、血便の量、他の症状の有無や発症時の状況を詳しく伺います。発症以前に食べた物や内服した薬剤、便秘や下痢の有無、持病などが診断の手掛かりとなります。

その情報から、出血源が上部なのか、あるいは下部消化管なのかを判断します。

緊急性(止血処置、入院加療など)のある病態を疑う場合や、炎症性腸疾患や肛門疾患など特殊な治療を必要とする病態を疑う場合、患者様のご希望などに応じ、受診当日のうちに内視鏡検査や肛門鏡検査を行い、出血源の特定に努めます。

注意して頂きたいのは、もともと痔疾患があり、血便の原因を痔と思い込んでおられるケースです。 血便に慣れてしまい、なかなか内視鏡検査を受けるに至らず、腫瘍や炎症ができていた際に診断・治療が遅れてしまうことになります。

主な血便の原因

腫瘍性のもの 大腸がんなどの消化管がん、ポリープ
炎症性のもの潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、薬剤性腸炎、腸結核
血管性のもの 虚血性腸炎、憩室出血、出血性腸炎、直腸潰瘍、痔核

この他にも肛門から血液を排出する疾患はあります。早期の診断・治療が、病状を悪化させないためにも大切です。腹痛や嘔気など伴わないときにも、毎日便の状態は観察しておきましょう。

痔(いぼ痔・切れ痔など)をお持ちの方、出血に慣れてしまっている方もおられると思います。痔からの出血と決めつける事なく、大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。痔と他の病気を併せ持っていることもしばしばあります。また、真っ黒な便が出たときには、まず上部消化管内視鏡検査を受けるようにしましょう。

血便の性状

真っ赤な血が排便時にポタポタ落ちる、ティッシュに付着する

痔(内痔核)の可能性が高く、肛門からの出血が疑われます。

切れ痔、直腸ポリープなどの可能性もあります。

便に血が混じる・便のまわりに血がつく

各種の大腸炎、大腸ポリープ、大腸がんなどが疑われます。

ヌルッとした粘液を含んだ血が混じる(粘血便)

潰瘍性大腸炎 、各種の直腸炎、大腸ポリープなどが疑われます。

便潜血反応 陽性

上記のすべての病気の存在が疑われます。

主な病気

痔(主に内痔核)

お尻を拭いた際、紙に血が付着する程度から、便器が真っ赤になることもあります。
出血の色が鮮やか。腹痛、発熱などを伴わず、便通は便秘傾向にあります。最も多く血便の70%。

大腸憩室出血

大腸憩室は、大腸の壁が袋状に飛び出した変形で、中高年者にしばしば見られます。
ここから突然大量に出血することがあります。腹痛や発熱を伴うことはまれです。

虚血性大腸炎

動脈硬化や糖尿病、便秘などが関係する腸の粘膜に、広範囲に潰瘍を生じる病気。
主に高齢の方に多く、急に血便が出て、下痢や腹痛なども伴います。

大腸癌

大腸癌は初期はほとんど無症状。
大きく進行すると便が出にくくなり、お腹がはる、ガスや便が出にくい、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、排便後もスッキリしない状態になることもあります。
鮮血で粘液と共に便の表面に付着するか、または便に混じって見られます。

大腸ポリープ

腺腫性ポリープは、放置しておくと成長し大腸がんなることもあります。
出血は少量のため気付かず、健康診断の便潜血検査で指摘されることが多いです。

感染性腸炎

病原性をもった細菌が原因で、腹痛や水様性下痢、嘔気、発熱を伴い、ときに出血することもあります。
病原菌の種類によって、発症のタイミング、腹痛の部位や便の状態などに様々な特徴があります。

薬剤性出血性腸炎

病気の治療のため投与された薬(抗生物質)が原因で、下痢や血便、激しい腹痛が起こることがあります。
症状は感染性腸炎に似ています。

潰瘍性大腸炎

30歳以下の若年に多い病気で、原因不明で、自己免疫異常や心理的要因と考えられています。
直腸から口側に連続する炎症により、粘膜のびらん、潰瘍が多発する病気。
粘液の混じった固形~血性下痢を慢性的に繰り返します。